なでしこジャパンのパリ五輪でのベスト8、U-20代表・ヤングなでしこのW杯準優勝、そしてU-17代表・リトルなでしこのW杯ベスト8と、一区切りをつけた日本女子サッカー。この結果に満足せず、さらに高みを目指すなでしこたちに期待することを考察してみました。
アジアはもちろん、世界的にも国際大会強豪チームとなっている日本。しかし、なでしこジャパンの昨年のW杯でのベスト8という結果を踏まえても、再び世界の頂点に立つためには改革が必要で、JFAも選手たちもさらなる強化を見据えた新体制の必要性を感じています。
それが顕著に表れていたのが、先日のなでしこジャパン対韓国の国際親善試合。新監督を迎えて初陣に挑んだ韓国に対し、日本は佐々木則夫氏が監督代行をするという異例の事態となっており、U-20代表を率いてきた狩野倫久氏と新たに内田篤人氏をコーチに招いていました。
松窪真心選手らU-20からの若手を招集した一方で、熊谷紗希選手らベテランを残すということにも、これまでの経験を若い世代にしっかり伝えつつ、これまでのサッカーでは破ることのできない世界の壁を突破するための、数年後を見越したビジョンが語られたのでしょう。
今回の韓国戦前に、「新たなスタートを切るにあたり、今後の指標になるようなサッカーにトライしたい」と語っていた佐々木氏が目指したのは『球際のアクション強化』。これまで以上の早いプレス、そしてそこで負けないフィジカルといったことなどがあったそうです。
\\今日の全4ゴールをピッチレベルから🎥⚽️//#北川ひかる #藤野あおば #田中美南 #谷川萌々子
— JFAなでしこサッカー (@jfa_nadeshiko) 2024年10月26日
🏆MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2024
🇯🇵なでしこジャパン 4-0 韓国女子代表🇰🇷#BEYOURBESTSELF #最高の自分であれ#夢への勇気を #なでしこジャパン#jfa #daihyo #nadeshiko #サッカー日本代表 pic.twitter.com/MA0GqzgRw9
このA代表であるなでしこジャパンの今後の方針を踏まえつつ、各世代の育成方針やJFAから各クラブへの依頼などを考慮して、まずはU世代でも特に若いU-15、U-16世代から考えていきたいと思います。
年間を通して、モンテギュー国際大会やアジアでのU-15女子選手権という1大会のみの国際経験、そしてそれに合わせた合宿など数少ない代表活動となっているこの世代。監督も他の世代と兼任することもあり、今年は白井貞義監督がU-16世代の代表監督も兼任し、A代表がW杯でなでしこを破ったスウェーデンなどを下し優勝していました。
そこで躍動していたのが、大会ベストスコアラーに選出されていた中村心乃葉選手と、エースナンバー10番をつけ、大会最優秀選手となっていた髙橋佑奈選手。2人を中心に相手ゴールに襲いかかり、フランスとの親善試合では前半10分で一挙3得点とその攻撃力の高さを示すと、他の試合においても、まるで大人と子どもが対戦しているかのような試合展開で、早めのプレスで終始日本が攻め続けるという理想のサッカーが展開できていました。この年代においてはまだまだ身体も成長過程にあるため、それほどフィジカルの差はありませんでした。
そして急に代表合宿などへの招集がかかるのがU-17世代。今年は4月からのアジアカップに向けて2月に数日、そしてアジアカップ直前に1週間程度の合宿が設けられ、そこで招集された選手たちが監督やスタッフのもと、組織的な動きや代表としての戦術を指導されるようです。
今回のW杯に向けても同様の頻度での招集となっており、欧州勢や他のチームに比べやや合宿の日数が少なく、個人的に気になっていました。今回のW杯で同じグループとなっていたポーランドは、1ヶ月ほど前から徹底的に組織的な動きを叩き込まれていたようです。
また環境を変えての合宿やトレーニングマッチも積極的に行なっていたようですし、大会2連覇中のスペインに関しては、ブラジルや日本といった優勝候補とされるようなチームとのトレーニングマッチを頻繁に行ない、実践を通してメンタル強化も図っていたようです。
そしてこの年代あたりから、日本と海外勢との身体的能力に大きな差が出始め、日本のパスやドリブルといった高いスキルだけでは対応できない状況が生まれています。それでも、今大会でもみられた正確な前方へのパスは有効で、幾度となくチャンスを生んでいました。
あとはそれをゴールに決め切るという強いメンタルと、決め切るだけの強靭なシュート力。今回の眞城美春選手らにもそういった力がないというわけではありませんが、北朝鮮選手などを見ると、日本選手もまだまだ伸ばせる能力なのではないかと感じてしまいました。
そして、谷川萌々子選手や古賀塔子選手のようにA代表にも選ばれることのあるU-20世代。各国の協会・連盟によっては他の年代と兼ねることも良しとされますが、日本はそれを認めておらず、上の世代に一度招集されると元の世代では招集されることはないのが現状…。
仮に今年のU-20女子W杯に、兼ねることも良しとする北朝鮮と同じように谷川選手や古賀選手、藤野あおば選手、浜野まいか選手が出場していたならば、結果は変わっていたことでしょう。それでも北朝鮮に敗れはしたものの、準優勝という結果を残していたヤングなでしこ。
狩野監督のもと、グループステージでもノックアウトステージでも、失点を少なくするためのシステムや組織的な動き、そして少ないチャンスをものにしたFW陣の決定力がこの結果につながっていたようです。それでも球際の強さでは個人では太刀打ちできないシーンも…。
そんなこの大会で個人的に注目してみていたのは、大山愛笑選手の視野の広さと大胆なパス。A代表やU-17では長谷川唯選手や眞城選手のような役割を大山選手が担い、その相手を惑わし、チャンスメイクに特化した選手の育成はどの代表にも不可欠だと感じました。
どうしても身体的特徴で海外に劣る日本ですが、再び世界の頂点を取れないかというとそうではないと思います。クラブや所属先のこともありますので、北朝鮮のように常にチームとして備えられるわけでもありませんし、身体強化を代表合宿で強いることもないでしょう。
これからA代表に就くであろう新監督の意向も多少あるでしょうが、なでしこジャパンが先頭に立ち、どういったサッカーを展開していくか興味は尽きませんが、ぜひPK戦への備えだけは忘れずに行なってもらいたいところですね。これからも応援していきましょう。